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年も明け、彼女と二人で、再び会うことにした。 「寂しい、お正月だったなぁ」 そうだろうと、思う。 彼女は、日比谷に昨年新しく出来た、5つ星ホテル、 「ペニンシュラ」を予約していた。 年末は丸の内ですごし、新年を日比谷で迎える彼女。 予約した彼女の心を推し量ると、亡くなった夫への想いが、 痛いほど伝わってくる。 彼女の夫は、年んがら年中残業で、高層ビルの一室で、 一夜を明かす事も多々あった。 脳梗塞で倒れるには、早すぎた死だった。 「昨年はありがとう。 なんとか、クリスマスを、やり過ごしたけど、やっぱり打撃」 ペニンシュラは、まっさらな、新しく出来たホテル。 きっと、彼女は、このホテルのように、心機一転したかったの だろう。 彼女の予約したスウィートは、皇居を眼下に見下ろせる 広々とした部屋。 「皇居を真下に見下ろしながら眠るなんて、不敬罪にならない?」 と、私。 「部屋に、居ながらにして、皇居参拝なのね。」 二人は、作り笑顔で、うなずいた。 ----- 皇居を、こうして窓から眼下に望むと、天皇ご一家の住まう お屋敷は、狭いような、広いような・・・不思議な気がする。 のっぽのホテルや官公庁に囲まれた皇居は、森に囲まれてい るとはいえ、お住まいは、丸見えだ。 (公私共に、落ち着かないだろうなぁ・・・) しかし、この部屋から見る景観は、確かに、すごい。 元、日活の跡地に立つペニンシュラ。 よい立地条件だが、跡地は三角形をしているらしい。 ウエルカムワインがテーブルに置かれ、二つワイングラスが 並んでいた。 ペニンシュラは、香港だが、応接間のテーブルの上には オカキがいくつか入った重箱と、柿が二つ、添えてあった。 日本らしい、趣向も工夫されている。 バスルームにはTVがあり、 ユカタがあり、デスクも備え付け られている。 ペニンシュラのバスローブとタオルは、分厚く、とても大きく、 ペニンシュラの経済力を思わせる。 数えてみると、TV3箇所・デスク3箇所。 二人は、この、バスルームのTVが大そう気に入った。 (アメニティーは中国製。 丸の内フォーシーズンはフランス製。 軍配は、香り、デザインともに、フォーシーズンの勝ち) ---- 都会のホテルは、日常見られないような人々が集まる。 作家と思しき老人と、振袖を着た若いホステス。 ミュージシャンと思われる家族。 最新の洋服を身にまとった、モデルも多く見かけた。 イギリス人の家族連れは、食事中、会話をほとんどしない。 とくに、ご主人と思われる紳士は、話をしない。 マナーの国だと思う。 アメリカのご夫妻は、ウエイターが椅子を引く前に、当たり前 のように、テーブルに着くか否かのうちに、奥様の椅子を引く。 人間観察にはもってこいのホテル。 ------ ペニンシュラでは本来、中華を頂くのが本筋だが、フランス料理を頂いた。 コック長は、若き35歳。 ありきたりの味ではない、洒落た味付けが新鮮だったので 「おもしろい味でした。お若い方が料理しているんでしょう?」 「おもしろいと言って頂けるのが最高です。 若い?わかりますか?35歳のコック長です」 食材の素材が複雑に絡み合った料理とソース構成。 それぞれの持ち味が、特徴を捉え、よく考え出されていると思う。 食いしん坊の二人には、”ガッツリ、一皿”とは、対面できないのが 少し、心残り。 混んでいたせいかもしれないが、もう少しじっくりメニューを 見たかった。 「メインを決めて頂ければ、後はこちらで構成します」 (”待て待て、じっくり吟味して、こちらで選びたいんだけど・・・” とは、雰囲気的に言えなかった) ------ 食事から帰り、エレベーターに乗ってきた若い二人連れは 全身オーダーメイドで、見るからに香港系財閥の二人連れ。 若い男性が、エレベーターを押した階は、最高階だった。 どこに、不況の波があるのだろうか・・・。 大都会のホテル。 ペニンシュラの一階は、アフタヌーンティーの客で賑わうが ありきたりの味で、高い割りに、あまり美味しくない。 暖かくないスコーンには、がっかり。 紅茶は、確かに、美味しい。 重い銀のティーポット。 頃合を見計り、係りの方が、カップに紅茶を注いでくれる。 自分のペースでお茶を飲みたい向きには、このサービスは 余分な気がするが・・・。 若い方々は、目を配り、気配りしてはいるが、支配人が、部下 と、立ち話をずっとしているのが気になった。 清算場所も人が並び、ごったがえしている。 室内へ向かうエレベーター脇、大理石もどきの白い壁面下の 汚れが目立つ。 気になったのは、女性が全員といってよいくらい、厚化粧だった 事。 どの顔も、ホステスみたいだ。 出来上がったばかりのペニンシュラは、謳い文句の「5つ星」 とは、言いがたい。 招待してくれた彼女の胸中を、家に帰っても、まだ、思っている。 |
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